富士講の足跡を辿る・日本橋からの富士山道

    甲州道中D 上野原宿〜犬目宿

◆上野原宿(262m)〜鶴川宿(205m) 1.97km
ルートMAP

本町の信号を過ぎると、山梨中央銀行の所で国道20号は左にカーブしていきます(74.03km地点)。甲州道中はここにある歩道橋をくぐらずに、手前の左の小道に入っていきます。入口は道幅が狭いですが、先に進むと次第に広くなり、右側にきれいな用水路が流れるようになります。

左手に集合住宅が並び、少し下ると道が3方向に分かれます(74.56km地点)。1つは右上に登って行く道、1つは集合住宅沿いに左にカーブして下っていく道で、甲州道中はその間の用水路沿いの小道を下っていきます。110mほど下っていくとまた分岐があるので右に曲がっていきます(74.67km地点)。


山梨中央銀行前の道中入口


集合住宅前の分岐


小道の分岐

資料によってはこの分岐を左に下っていって、国道20号の新田倉交差点を横断して鶴川に向かう道筋が甲州道中というものもありますが、畑の中に石造物はあるものの新田倉交差点からのルートが不明のため、分岐は右に曲がるといいでしょう。

話を戻し、分岐から90m進むと国道20号の上の歩道橋があるので渡っていきます。ここからの眺望はとても良いので、立ち止まってこれから行く道を確認するといいでしょう。歩道橋を降りて、鶴川へ下る県道30号に入って行きます。

車道はヘアピンカーブを2回繰り返して下っていきますが、歩行者専用道路は県道から離れて、左下に下ってショートカットしていきます(75.05km地点)。




もう1つの道筋の石造物


国道20号の歩道橋

県道30号と交差するので真直ぐ横断して真直ぐ小道に入り、再び県道30号にぶつかります。右に曲がり、左にカーブしていくと鶴川橋(75.23km地点)を渡って行きます。4月には川沿いに桜並木が咲き乱れ、5月には鯉のぼりが川の上に張られます。この鶴川は少し南よりの所に鶴川の渡しがあり、増水時徒歩渡し<かちわたし>といって水量の多い夏季は徒歩で渡り、少ない冬季は簡易な橋が架けられてたそうです。

川を渡ると、ここからが十九次・鶴川宿で、水天宮の大ケヤキが出迎えてくれます。大ケヤキの前を右にカーブをして宿場町に入って行きます。集落の中央にある鶴川神社には、中央に穴が開いている石が2つあり、元は宿場町の民家の前にあった駒つなぎ石があり、文字通りこれに馬をつないでいたそうです。また、この辺りにコンビニのヤマザキショップがあるので水分が少ないようなら補給していったほうがいいです。集落の奥のほうにある大きな家が本陣(205m・75.58km地点)だと思われます。


桜咲く鶴川橋


5月の鶴川、鯉のぼりが掛けられる


鶴川宿


◆鶴川宿(205m)〜野田尻宿(356m) 4.14km
ルートMAP

本陣跡の先にある左の砂利の小道に入って、少し進むとまた舗装路に出るので左に曲がって坂を登っていきます。坂の途中にはガードレールで見にくいですが馬頭観世音があり、先にある分岐点(75.84km地点)は右に進みます。途中に庚申塔馬頭観世音の石碑があり、珍しい洋風の倉が右手に見えてきます。

更に坂を登っていくと、右手にログハウス(76.17km地点)が見えてきます。その向かいに鶴川宿への案内板の所に林の中に入っていく道があり、その中には馬頭観世音などの石碑や山王神社があります。工事の際に移設されたのか、こちらが本来の道筋かは不明ですが、道中の通り沿いにあったものと思われます。


本陣隣にある甲州道中の道筋


坂の途中の分岐点


山王神社や石碑群の入口

森の坂道を登りきると、いきなり視界が開けて中央自動車道にぶつかります。右に曲がり、側道沿いに歩いて始めに見える蔦ヶ崎橋を渡ります。橋を渡ると切り通しの坂道を登っていきます。ここにはかつて19里目の大椚一里塚(308m・76.81km地点)があったそうですが消滅してしまいました。この辺りの甲州道中も、中央自動車道ができる前はもう少し高い位置を歩いていたと思われます。

廿三夜塔や念佛供養塔の石碑を通り過ぎ、大椚集落を350m進むと石造物と一緒に『大椚宿発祥の地』という標識(77.47km地点)が立っています。ここは間宿<あいのしゅく>として発展していきました。


中央自動車道の側道


正面が19里目・大椚一里塚推定地


間の宿・大椚宿の発祥地

大椚集落の外れに吾妻神社(77.67km地点)があり、ここにはトイレもあるので休憩するにはいい場所です。再び中央自動車道が近づくと標高が350mになり、側道を少し下っていきます。談合坂SAまであと1kmの標識の先でまた登り始め、坂の途中に長峰砦跡(78.58km地点)があります。


吾妻神社・トイレ休憩が可能


談合坂SAまであと1kmの標識


長峰砦跡

坂を上りきったところに、中央自動車道に架かる橋があるので右折して渡っていきます。切り通しの坂道を下っていくと野田尻集落に入ります。道幅が広くなるが車はほとんど走らず、すぐそばには中央自動車道が走っているはずなのに、その騒がしさを感じさせない落ち着いた街並みが出迎えてくれます。集落の終わる辺りの右手に明治天皇御小休所跡が二十次・野田尻宿本陣跡(356m・79.72km地点)です。


野田尻宿に入っていく橋


穏やかな雰囲気のする野田尻集落


野田尻宿

そばには公衆トイレもあり、少し先の犬嶋神社で休憩するのもいいでしょう。ただ食事できるような店はなく、どうしても食事をしたい人は高速バスの野田尻BS(下り)の連絡通路を使って談合坂SAに行くのもいいかもしれません。ここを出発・到着地点にする場合の交通手段は中央高速バスで、下りはバス停は談合坂SA内にあり、新宿駅〜上野原BS区間で乗車できて、野田尻BSは下車のみで乗車することはできません。反対の上りは集落東入口の方にあり、野田尻BSは乗車のみで、上野原BS〜新宿駅は下車となっています(但し、上野原BSのみ乗下車可能)。


◆野田尻宿(356m)〜犬目宿(506m) 3.34km
ルートMAP

野田尻宿の外れには明治19年の大火によって焼かれた木の幹が残っていて、緩やかに左カーブしていきます。T字路を直進して右にカーブしていくと、左手にお玉ヶ井と刻まれた石碑があります。正面には木の板に色々書いている西光寺(79.94km地点)があり、右の小道に入って行きます。坂を登ると中央自動車道沿いに出て、始めの珍しい石畳風の橋(80.21km地点)を渡っていきます。


野田尻大火で焼け残った木の幹


西光寺前を右折


左折して石畳の橋を渡る

橋を渡ると砂利道に変わり、鳥の巣箱がたくさん設置されている林道に入って行きます。林道の出口にぶつかる県道30号を右に曲がって少し行くと右手に富士講碑があり、更に進むと土手の上に20里目荻野一里塚跡(397m・80.47km地点)があります。


林道出口を右折


荻野の富士講碑


20里目・荻野一里塚跡

荻野集落を過ぎると、中央自動車道を渡る矢坪橋(81.30km地点)があるので右折して渡って行きます。渡った先の十字路を直進すると大乗妙典日本廻国供養塔があり、そのすぐ先にある右上に登っていく小道(424m・81.42km地点)に入って行きます。入り口には矢坪坂古戦場の解説版があります。

少し登ると左下に見える遺跡は、どうやら古墳のようでした(遠目で解説版を見ていたので詳しくはわかりませんが)。さらに坂道を進むと武甕槌<たけみかづち>神社の鳥居があり、民家を過ぎると未舗装の林道に入って行きます(451m・81.66km地点)。


右折して矢坪橋を渡る


矢坪橋を渡った先にある小道に入る


民家の前を通り、林道に入る

林を抜けると、左手は崖になっていて見晴らしが良くなります。ガードレールが切れるところに分岐(81.78km地点)があり、右上に登って森の中に入っていきます。途中に矢坪金毘羅神社参道(81.83km地点)と書かれた標識が、いったい誰が参拝しに行くのだろうと思う様なところに建っていました。また左手は高さ20m程の急な崖になっていて、現代はガードレールがあるからいいものの、昔はここを参勤交代で大名行列が進んでいたのだから命がけだったのでしょう。


電柱と同じ高さの道を進む


ガードレールの切れるところを右上に


左は急な崖

また森の中に入って進むと柵の切れているところがあり、案内板には座頭転がし(481m・81.98km地点)と書かれていました。ここは座頭(盲目の按摩師・琵琶法師などのこと、勝新やたけしのやっていた座頭市が有名ですね)が前の人の声を頼りに進んでいったら、道を踏み外して崖から落ちて死んでしまったことから付けられたそうです。右上には2体の地蔵と石祠が建てられており、これは2人の座頭を供養したものでしょうか。

民家が見えると林道も終わり、舗装路となって新田集落が始まります。集落の真ん中辺りに尾張藩藩主が宿泊していた間宿・新田宿(502m・82.31km地点)があります。


座頭転がし


間宿・新田宿


安達野集落で県道30号に戻る

一旦坂を下り、」安達野集落(82.51km地点)の入口で県道30号に戻って坂を登っていきます。登りきった所に犬目集落があり、その中心に犬目宿直売所に二十一次・犬目宿の石碑が建っていて、公衆トイレもあります。この先には義民・犬目兵助の生家があり、更にその先に明治天皇御小休所址碑があり、ここがかつての本陣跡(506m・83.06km地点)でした。葛飾北斎の冨嶽三十六景・甲州犬目峠も右が登り坂ということからこの近辺で描かれたものと思います。


犬目宿直売所前の石碑


犬目宿・本陣跡


葛飾北斎・冨嶽三十六景『甲州犬目峠』


6.犬目宿〜大月宿


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